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フェン

定価¥0 特価

 半リート(二メートル)もの長身ながら均整が取れたラマス教の見習い僧。
 出身地の名を入れて「カロウナのフェン」と名乗ることが多い。係累は父がハオ、母がマハ。母方の伯母ミューラ、その娘で従姉がジュレ・ミィになる。なおジュレ以外全員が死亡している。
 父親に連れられて赤ん坊の頃、ダマスタ国の開拓村にやってくる。幼少の頃より悪たれ、乱暴者と村人に嫌われ、父親の死後はソーブン寺に押し込められて無理やり修行させられていた。当時、若年ながら拳士としての力量は相当なもので気功術を使うことに長けた高弟でなければ歯が立たないほどだった。

(聖都編)
 ダム・ダーラに雇われたグルーンワルズ傭兵騎士団が寺の管長ハラハ・ヴァルマーの娘にして、フェンにとっても幼なじみになるリムリアを拉致する。村が操兵の群れに襲われていると知ったフェンは、かつて父親と住んでいた家に向かい、納屋に隠しておいた古い操兵を起動させる。これが自身の出自、いや、はるかなる前世である記憶を呼び覚ます旅の始まりとなった。
 傭兵騎士団の団長ガシュガル・メヒムとの対戦では痛み分けの結果に終わるが、リムリアの救出を名目に村を出ることができた。
 交易路の宿場町ドウシャで仲間となるジュレやクリシュナ・ラプトゥと出会う。三人の旅は長くは続かず、ダム・ダーラ配下の《火の門》バルサの襲撃を引き金としてヴァシュマールの隠された能力が発現し、はるか北のカッチャナラ山まで竜巻に乗って運ばれる。
 運命に導かれたようにその雪深き地でラドウ・クランドとガルン・ストラに会う。穏やかな日々が続くも《水の門》シーターが刺客として送り込まれる。しかしフェンに対してではなく標的はラドウだった。聖刻教会の聖刻騎士団前団将だったラドウを殺害し、その罪を居合わせたガルンになすりつけてその父親である現団将ジャン・ストラを失脚させようという狙いだった。
 雪の下で回復を待っていたヴァシュマールが復活し、シーターの呪操兵を撃破する。山を下りたフェンとガルンは《月の門》カルラなどの刺客を退けながらウルオゴナ国の王都デュラハーンを経てゴナ砂漠を渡り、十数年前に滅びたホータン国の聖都アラクシャーへと辿り着く。リムリアを追ってだったが、実は誘導されたことにフェンは気づいていない。
 ダム・ダーラは聖都地下で休眠状態の《白亜の塔》を蘇らせて一千騎もの古操兵軍団を使い、中原に戦乱を巻き起こし、ゆくゆくは大陸全土を混乱の渦に叩き込もうとしていた。これが聖都計画だが、それ以上に重要視していたのが《白き操兵》を討伐し、自陣営に加えることだ。そのためにフェンに代わる操手としてゾマを用意していた。
《塔》最上階でゾマは決闘で敗れたもののダム・ダーラが憑依して、さらには《黒き操兵》ハイダルを召喚し、フェンを殺害し、ヴァシュマールを掌中に収める。
 他にもガルンやリムリアも死亡していたが、《塔》を管理する集合意識体《リムリア》が古操兵《千の守護者》を介してカルラに接触し、状況打破に動き出す。
 特にリムリアの蘇生は重要で当代の管理者として承認されれば休眠していた機能が使用可能となる。最下層で発見したヴァシュマールの核とも言うべき六五個目の聖刻石《真・聖刻》によってゾマの体に憑依していたダム・ダーラを祓い、フェンの蘇生も叶うのだった。
 但しリムリアだけではフェンを蘇らせることは叶わなかった。ヴァシュマールの仮面に宿った意思がフェンの魂を食らおうとしていたからだ。救ったのはジュレだった。
 その頃彼女はクリシュナに同行してウルオゴナ軍と戦っており、敵の中にいたガシュガル・メヒムとの対戦で頭を強く打ち、昏睡状態に陥っていた。
 しかし意識は肉体を離れて怪物化したヴァシュマールとそれに抗うフェンのもとに吸い寄せられていた。ジュレの励ましもあり、フェンはヴァシュマールとの対決に勝ち魂を食われずに復活を遂げることができた。
 操手槽を出るとヴァシュマールの機体は見違えるほど変わっていた。ただ修復されていただけではなく保管されていた本来の鎧に置き換わっていたからだ。この《塔》こそ数千年にも亘ってヴァシュマールが封印されていた墓所だったのだ。
 リムリアとの再会を喜ぶ暇もなくダマスタに向かって進軍するホータン兵を乗せた古操兵軍団を追ってヴァシュマールで出撃する。立ちはだかるハイダル。中に乗っているのはダム・ダーラに操られた《陽の門》リーチャだったが、フェンの師ハラハがダム・ダーラ本体を討つ。操手との繋がりを断たれたハイダルは機能不全を起こし、フェンはその隙を逃さず強敵の打倒に成功する。

(東方編)
 フェンはガルンに付き合って東方に向かう。クリシュナとジュレも同行する。
 ガルンは潔白を証明して聖刻騎士団を本来の姿を戻す目的があったが、フェンは明確な目的はなかった。あるのは東から漠然と感じる敵の気配だ。しかしその時点で最大の敵はヴァシュマールだった。《真・聖刻》を取り戻し、徐々に封印の効果が薄くなり《八の聖刻》としての本性を顕わにしていく。
 ガルンとクリシュナは仲間付き合いを続けるが、封印者としてヴァシュマールを警戒せざるをえない。そして聖刻教会の法王ネーザは《白き操兵》討伐のために軍勢を送り込む。同時に聖刻騎士団に邪魔なふたつの勢力、クランド家とストラ家を始末する裏の狙いあった。
 その企みは教会内の反法王一派と、何よりもガルンが体を張った説得により勅命軍総大将のラマール・クランドを翻意させたことで潰えた。
 しかし聖刻騎士団最強と謳われるガルンの古巣である赤龍騎士団が攻めかかり、ついにはヴァシュマールの暴走を引き起こしてしまう。
《八の聖刻》は戦によって力を溜め込み、高めることができる。ふたつのアグ河を渡ってこのかた大戦を潜り抜けて多大な戦気を吸収してきたヴァシュマールは施されていた枷を引き千切るだけの力を蓄えていた。
 暴走が起きた時点でフェンの肉体は《聖刻力》を重なり合う別次元から導引する管として部品状態に陥っていたが、三聖剣の力でヴァシュマールの動きは押さえ込まれ、その間にジュレが乗り移って再びヴァシュマールとの対決に参加する。
 肉体としてはフェンのほうが何十倍も上回っていたが、精神力や魂の格では力関係は逆転する。しかもふたりの前世の記憶を塞いでいた蓋も外れて、巨神族だった頃の記憶が蘇る。そしてヴァシュマールが龍との戦いで落命した英雄神の魂魄が聖刻石に転じ、操兵と似た人造の肉体に装着して生まれたものだと判明する。
 すなわちフェンとヴァシュマールは本来ひとつのものだったのだ。今ならばヴァシュマールを従えることができたが、フェンはそれを望まず今まで通り「相棒」と呼びかけるのだった。

(僧正編)
 フェンとジュレは前世において姉弟だとわかり、クリシュナとの仲がぎくしゃくした。フェンが巨神としての能力に目覚めて力に大きな隔たりができたことも原因のひとつだった。間を取り持てるガルンがラマールたちとともに教都ワースランに向かったことも悪く働いた。
 そんな中聖華八門の残党《土の門》ダロト改めヒゼキア解放軍軍師バール・テンドル配下の術者が獣機にて攻めかかってきた。覚醒したヴァシュマールとフェンたちの敵ではなかったが、クリシュナのアビ・ルーパは大破して、本人は行方不明になった。
 そして敵方にいた顔見知りの少女メルが仲間に加わる。メルは東方領域に入る前に非教会系練法師の隠れ里で出会った。その体は黒き血に侵されており、超人的な能力向上と引き替えに心身が怪物化するもので《黒》の呪いと称すべきものだ。
 幸いジュレの癒しの力で侵蝕を押さえ込むことができた。だがそのせいで目先の目的がメルの解呪となり、ジュレはクリシュナを追うことができなくなった。
 そう時を経ずクリシュナが舞い戻る。但しフェンの敵としてだ。新たな操兵アルタシャールを得たクリシュナは練法を用いてフェンとヴァシュマールを翻弄、そしてジュレを確保した上で時空の狭間に飛ばした。
 フェンとメルは五〇〇年前の西方でクリシュナの前世である《西方の黒き魔女》イーシュナと、二十数年前の東方では赤ん坊時代のジュレと会ってくる。そして元の時代、場所に戻ったフェンは復活した《黒き僧正》との決戦を繰り広げるのだった。

(神樹編)
《僧正》は再封印できたが、ダム・ダーラの完全復活も時間の問題となった。それまで短い時間をフェンはリムリアのもとで過ごす。折しもダム・ダーラは八機神を主軸にした新たな実行部隊を組織して聖都を攻め立てさせた。獣機の群れが都を襲い、甚大な被害が生じる。《塔》が生み出した最後の複製体レムールを王女に据えてフェンはリムリアを連れて再び東方に旅立った。